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サミュエル・ラインハルト インタビュー
アルバム「10人の演奏者のために」について​

「絶えず変化しながらも、同時に — おそらくやや逆説的に — 静寂を呼び起こすもの」— サミュエル・ラインハルト
Samuel Reinhard - For 10 Musicians I
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座間裕子:このアルバム『10人の演奏者のために』は4つの楽曲で構成されていますが、4曲の繋がりがとても自然で、あたかも一つの50分間にわたる連続した作品のように感じられますね。このアルバムを聴くと、静けさと内省に満ちた時間を過ごせるように思います。50分間にわたって音楽に劇的な変化は生じませんが、ゆっくりと、ほとんど気づかないほどの微妙な変化を通じて、音楽の力が静かに、しかし確実に増していくように感じられます。それはまるで音もなく降り積もる雪のように、無理のない穏やかな変化であり、この音楽に華美ではない有機的な美しさを与えているように思います。
 
これらの曲が生まれた背景についてお聞かせいただけますか? どのような意図を持って作曲されたのでしょうか?

 
サミュエル・ラインハルト:私は数年にわたって大人数のアンサンブルのための作曲を構想してきましたが、この作品に本格的に着手したのは2024年の春で、2025年初頭に完成させました。私の制作プロセスではよくあることですが、数か月にわたって様々なアプローチや楽器編成を試行錯誤した末、最終的に2台のピアノに管弦楽セクションを加えた編成に落ち着きました。
 
私は以前から試みてきた「非指向性」の音楽をさらに追求することに興味がありました。必ずしも「どこかに向かう」のではなく、微細な変化や展開を伝えながら、それ以外は「その場にとどまる」ような音楽です。ある意味、これは私が長年追求してきた「それ自体の内に静止している」ような音楽の延長線上にあると言えます。静かに降り積もる雪のイメージは実に美しく、また絶えず変化しながらも、同時に——おそらくやや逆説的に——静寂を喚起するものの良い例だと思います。
 
この作品は主に2つの要素で構成されています。一方では、2台のピアノによって繰り返される2つの二音和音(各奏者に一つずつ割り当てられます)があります。他方では、ピアニストが短いフレーズを即興で演奏するための「音の群」が存在します。弦楽器と管楽器奏者も、同じ音の群から個々の音を選んで演奏することができます。作品の音色はこれらの和音と使用可能な音によって定義されますが、結果として生まれる和声的素材はある程度偶然性に委ねられ、常に変化し続ける対象となります(固定された拍子はなく、ピアノの和音を除けば、演奏者が割り当てられた時間枠内でどれだけ演奏するかは自由です)。
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photo © Jasmin Mebrouk
座間:なぜこの作品のために、ピアノ2台、弦楽器4本、クラリネット4本という10の楽器を選んだのですか?
 
ラインハルト:ピアノは常に私の作品の中心であり、何度も立ち返る楽器です。特に私は、複数のピアノを用いた作品制作を楽しんでいます。各ピアニストがごくわずかな音しか演奏しないために、複数の楽器が鳴っているとはすぐに気づかないような手法です。音楽が進行するにつれて、個々の演奏者が追求する音が重なり合い、融合していく過程で、聴き手は初めてこれが単一のピアノではないと気づくのです。この独特の曖昧さの中に、
私は強い魅力を感じるのです。
 
ここ数年、私はピアノ作品の音色のパレットを徐々に拡大し、より多くの楽器を取り入れる実験を重ねてきました。これまでに「二台のピアノと弦楽三重奏のために」(2022年)では弦楽器と、「ピアノと笙のために」(2024年)ではリード楽器奏者と、それぞれピアノが共演しています。ですから、弦楽器と木管楽器を取り入れた、もう少し規模の大きいアンサンブルとのコラボレーションは、とても魅力的に感じられたのです。
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photo © Jasmin Mebrouk
座間:このプロジェクトにおいて、これら10人の演奏者とのコラボレーションはどのように始まり、発展していったのでしょうか?また、セッションはどのように録音されたのでしょうか?
 
ラインハルト:長年共に活動してきた中心メンバー(ポール・ジェイコブ・フォッサム、ヴィンセント・ユエン・ルイス、ニコール・ホグストランド)に加え、私の音楽を初めて演奏する驚くべき才能を持つ演奏家たちと共に仕事できたことは幸運でした。昨年秋、ポール・ジェイコブがニューヨークを訪れた際に楽曲のワークショップと議論を重ね、同様にストリングス・セクションを率いるヴィンセント・ユエン・ルイスや管楽器セクションを率いるキャロリン・グッドウィンとは遠隔で同様の「ワークショップ」を行った後、コペンハーゲンの王立音楽アカデミーにある美しいスタジオで、1週末をかけて楽曲のリハーサルとレコーディングを行いました。過去5年ほどほぼ全てのセッションを録音してくれているフアン・フェリペ・アルセ・バヨナという素晴らしい録音技師に恵まれたことは、本当に幸運でした。彼は驚くべきエンジニアで、こうした演奏の親密さと細部を捉えるのに非常に長けています。
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photo © Jasmin Mebrouk
座間:録音後に彼らの演奏を聴いた時、どう思いましたか?何か印象に残ったことや驚いたことはありましたか?
 
ラインハルト:演奏に関わる全員が並外れた才能の持ち主であることは承知していましたが、それでもわずか数回のリハーサルでグループ全体が一体となっていく様子には驚かされました。演奏者たちが演奏を共にしていくうちに「集団意識」を形成していく様子は、音楽のもつ最も神秘的な側面の一つだと感じます。
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photo © Jasmin Mebrouk
座間:これらの録音は、あなたご自身で素晴らしい仕上がりにミックスされていますね。サウンドエンジニアとしても、繊細な音に対する鋭い耳をお持ちのようで関心しました。 ミキシングの工程と、最終的に目指したサウンドに対するご自身の目標についてお聞かせいただけますか?
 
ラインハルト:私は音響工学のバックグラウンドを持っており、録音スタジオを作曲ツールとして捉える考え方は、今も私の実践の中心にあります。録音作品においては、演奏の全体性を捉え、それをできるだけありのままに保存することに強い関心を持っています。これには楽器の音だけでなく、作品が録音される空間の音、その空間で動く人間の身体の音、そしてスタジオ自体の音や録音に使用される技術の音も同様に含まれます。
 
沈黙は私の作品のほとんどにおいて重要な役割を果たします。それは対位法的な力として用いられ、何かが演奏されている瞬間と何も演奏されていない瞬間に等しく重要性を与える手法です。もちろんこの沈黙は完全な無音ではなく、むしろ作品の中間領域を観察する余地を与える空間です。物理的空間における人間の身体が奏でる音の共鳴や痕跡、そして録音という連鎖が生み出す音響的特性——例えば多数のマイクとプリアンプ使用による微細なノイズの蓄積など——を捉えるための空間なのです。私はこれら全ての要素を、作品と録音そのものを最終的に形作る「より大きな全体」の一部と考えています。
 
ミキシング段階では、可能な限り手を加えず、最低限必要なEQ調整、場合によってはパンニングやバランスレベルの調整のみを行うようにしていますが、人為的に感じさせずに自然な音響をできるだけ生かすことを心がけています。
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photo © Nigel Rubirosa
座間:これまでに様々なレーベルから作品をリリースされていますが、2024年のアルバム『For Piano and Shō』(「ピアノと笙のために」)(elsewhere 032)では、ポール・ジェイコブ・フォッサムがピアノを、東田はる菜が笙を演奏して参加していますね。すべての作曲において一貫した目標をお持ちですか?それとも作品ごとに異なるテーマや目標があるのでしょうか?
 
ラインハルト:ここ数年、私の作品において基盤となってきた特定のテーマがあります。反復、遅さ、静止、沈黙です。これらは作曲上の手法として用いられ、私の作品に一貫して存在する一種の美的・哲学的枠組みを形成していると言えます。同時に、新たな作品ごとに未知の領域や手法を探求することにも強い関心を持っています。それは音楽そのものの核心となる体系的な枠組みの形をとることもあれば、テクスチャーや音色の側面、特定の楽器群の組み合わせ、演奏技法などへの実験的な試みとなることもあります。『10人の演奏者のために』では、小規模な演奏者グループ向けに最初に考案した反復を基にした「半偶然性」アプローチ(「二台のピアノと弦楽三重奏のために」「ピアノと笙のために」)を、より大規模なアンサンブルと拡張されたテクスチャーのパレットを用いてさらに発展させることに主に関心がありました。

(2025年7月~8月 elsewhere music によるインタビュー)
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photo © Hatnim Lee

ニューヨーク在住のスイス人作曲家サミュエル・ラインハルトによる『10人の演奏者のために』は、2025年にコペンハーゲンのデンマーク王立音楽アカデミーで録音された4部構成のアンサンブル作品。本作は、2024年にリリースされたラインハルトの『For Piano and Shō』(elsewhere 032)に続く、elsewhere musicにおける彼の作品集の第二弾。
 
今回のアルバムでは、各楽章において2人のピアニストに単一の和音が割り当てられ、作品全体を通して各自のペースでそれを繰り返すよう指示される。反復の合間には、ピアニストは決められた音群から短いフレーズを即興で演奏する。これに管弦楽器奏者——クラリネット2名、バスクラリネット2名、ヴィオラ2名、チェロ1名、コントラバス1名——が加わり、同じ音のグループから自由に選んだ単音を演奏する。ラインハルトの過去の作品同様、奏者には「音を鳴らしながら可能な限り静かに演奏すること」が指示され、割り当てられた時間内で自由に演奏の時間や量を調整できるほか、長めの休符を挟むことも自由に認められている。
 
『10人の演奏者のために』では、ラインハルトが「非指向性」と呼ぶ音楽を、アンサンブルが抑制した表現と鋭敏な「空白の感覚」を源泉として演奏していく。演奏者たちは、音と沈黙の間のヴェールに近づき、消え入りそうな音から音楽を紡ぎ出す。和声の発展はほぼ偶然に委ねられ、音は暗雲を刻む不確定な光の筋や、静かな水面の微かな揺らぎのように小さく変化しながら蓄積し、また消えていく。時にそれらは静かなテクスチャーへと集まり、あるいは溶け合う。4つの楽章は一つの大きな全体性を構成し、その静寂感は微妙な内部変化によって彩られる。全編を通じて、反復が音楽を静止状態へと導く構造となっている。

<演奏者>
 
ポール・ジェイコブ・フォッサム(ピアノ)
ギンテ・プレイサイテ(ピアノ)
ヴィンセント・ユエン・ルイス(コントラバス)
ニコール・ホグストランド(チェロ)
ポーリン・ホグストランド(ヴィオラ)
ミカ・ペルズドッター(ヴィオラ)
キャロリン・グッドウィン(バスクラリネット)
アンダース・バンケ(バスクラリネット)
フランチェスコ・ビゴーニ(クラリネット)
ヘンリエッテ・グロート(クラリネット)
​
Samuel Reinhard HP

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​​*CD and digital album will soon be available here on the elsewhere site and Bandcamp
​​(CD release:  November 1, 2025)

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